「グリーンマトリックスシステム」
港北ニュータウンは1974年(昭和49年)から順次開発が進み、1983年(昭和58年)より、「けやきが丘」や「みずきが丘」をはじめとした大規模集合住宅の入居が始まりました。人口30万人を目指して作られたこの港北ニュータウンも50年程が経ち、いよいよ本格的なメンテナンス時代に差し掛かっております。
都筑区の特徴として上げられるのが歩車分離を意識した「グリーンマトリックスシステム」です。
グリーンマトリックスシステムは「地区内の緑道を主骨格とし、集合住宅、学校、企業用地等のスーパーブロックの斜面樹林や屋敷林など民家の緑を公園緑地等の公共の緑と束ねて連続させ、さらに歴史的遺産、水系なども結合させて再構築したもので、地区全体における空間構成の要としている」※1とされています。
先日、都筑区公園愛護会の集いの基調講演で、グリーンマトリックスシステムの生みの親の上野 泰氏が本格的なご説明をされていましたが、こうした歩車分離の環境を整えるための当時の先進的な考えが港北ニュータウンには落とし込まれています。
一方で、このグリーンマトリックスシステムも当然老朽化が進むわけで、次世代にこの素晴らしい環境を残すためにも、我々メンテナンス世代がしっかりメンテナンスを行なっていかなければなりません。
Park-PFI手法を活かした緑道整備の財源創出
今現在、まずは緑道ということで「ゆうばえのみち」「せきれいのみち」「ささぶねのみち」の再整備は完了しておりますが、都筑区北部の「くさぶえのみち」「ふじやとのみち」の再整備については時期未定となっております。
グリーンマトリックスシステムは以前放映されたアド街ック天国でも魅力の1位に上がっており、住みたい街ランキングで上位に上がるための重要な環境です。
この環境を次世代に残すためにも、残りの「くさぶえのみち」と「ふじやとのみち」についてもしっかりと予算を確保していかなければなりません。
但し、今回再整備を終えたとして、また何十年後かに大規模な再整備を行わなければならないタイミングが必ずやってきます。人口減少が始まっている横浜に於いて、将来的に今のような環境を残すためには、それに向けた財源の捻出も大事な視点です。緑道は公園扱いとなるので、Park-PFI手法を活かした前向きな施策の展開も必要になってくるかと考えます。
※Park-PFIは、にぎわい創出を目的として都市公園に民間活力を導入するための制度のひとつで、別名「公募設置管理制度」とも呼ばれます。近年、都市公園に限らず、公共施設に民間活力を導入する手法がよく使われており、公園や公共施設のにぎわい創出につながっています。
横浜市の1/3の横断歩道橋が都筑区に
また、以前タウンニュースにも書きましたが、横浜市が管理する横断歩道橋の約1/3が都筑区にあることはご存知でしょうか?
本市道路局が管理する歩道橋の総数は326橋で、その内97橋が都筑区内に存在しております。
本市全体を見ると昭和40〜50年代に建設された割合が約半数を占め、今後老朽化を原因とした事故などの発生リスクが高まるとともに、維持管理費の大幅な増加が予想されます。
横浜市としては、歩道橋の集約化、つまり実質的には歩道橋を減らすことで維持管理費を削減しようとしていますが、本来必要なのは廃止ではなく、予防保全型の維持管理による維持管理費の削減です。
歩道橋の健全性の判定区分は
Ⅱ=支障は生じていないが、予防保全の観点から措置が望ましい状態
Ⅲ=支障が生じる可能性があり、早期に措置を講ずべき状態
Ⅳ=緊急に措置を講ずべき状態
上記の4つの段階があります。
横浜市はⅢの段階で措置を講ずることが慣例になっていますが、Ⅱの段階で予防保全を行うと、Ⅲ以降の段階で大規模な修繕や架け直しを行うよりも大幅なコスト削減が図れます。
都筑区でいうと現在85/97がⅡの段階にあり、今後どさっとⅢの段階に移行する可能性が高いので、Ⅱの段階で予算をしっかり取って、歩道橋の長寿命化、そして経費削減の道筋をつけなければなりません。
以上、グリーンマトリックスや横断歩道橋の維持管理について触れてきましたが、歩車分離などを駆使して子どもたちの安全を守るためには多大な予算がかかります。本来、出産費用補助などの政策は国が一律に展開するべきであり、地方自治体は子どもたちが安全に育つ環境を整えることに注力できるような体制が必要だと思います。小中学校の暑さ対策についてもそうです。現在、体育館のエアコンは10年間を目処に徐々に整備を進めているとの教育委員会からの回答がありますが、気温上昇は待ってはくれません。しっかりと予算を取り、子どもたちが暑さを乗り切れる環境を早急に整えなければなりません。私としては、命にも関わる子どもたちが安全に育つ環境を整えて、初めてソフト面の政策に重点を置いていくべきではないかと考えています。
インフラ・教育・福祉。限られた予算の中で、決して選挙対策ではなく、粛々と本質的な政策を推進していけるよう引き続き取り組んでまいります。
※1 一般社団法人建設コンサルタンツ協会会報誌より引用