市長選を終えて 〜将来的な財源不足にどう向き合うか〜

議員活動

8月3日に横浜市長選挙が行われましたが、投票率は約41%と低く、盛り上がりに欠ける結果となりました。
ここで、今回の選挙の争点を改めて振り返ります。

今回の立候補者は、現職の山中竹春氏のほか、田中康夫氏、福山敦士氏、高橋徳美氏、斉藤直明氏、小山正武氏の計6名。
結果は山中氏が2期目の当選を果たしました。

山中氏は複数の政党から支援を受け、他の5名は無所属で出馬。組織票の影響もあり、争点が見えにくい選挙戦だったのではないでしょうか。

大きなテーマは「将来的な財源不足」

私が今回の選挙戦で最も重要だと感じたのは、「将来的な財源不足にどう向き合うか」という点です。

横浜市財政局の令和4年度推計によれば、2030年度には502億円、2040年度には823億円、2065年度には1752億円の収支不足が見込まれています。これは、横浜市が歳入の大半を市民税に依存している一方で、人口減少により税収が減少し、増え続ける社会保障費の維持が困難になるためです。

対策は「人口減少の抑制」か「歳入構造の改革」

打開策は大きく分けて2つです。

  1. 人口減少を食い止める
  2. 歳入構造を改革する

まず人口減少について。横浜市の人口は約377万人をピークに減少局面へ入りました。
これは全国的な傾向で、今後は都市間で人口の奪い合いが起こります。
しかし、多摩川を越えれば東京都という地理的条件を踏まえると、東京都に人口獲得競争を挑み続けるには限界があります。

したがって人口維持政策は重要ですが、それ以上に新たな財源を生み出し、財政構造を健全化させることが最優先です。

横浜市の歳入構造

グラフからも分かる通り、市税収入のほぼ半分は市民税に依存しています。

人口減少が続けば市民税収は減少し、一方で高齢化により社会保障費は増え続けます。
そのため、義務的経費(人件費・扶助費・公債費など)の維持が難しくなり、歳入構造改革はまさに待ったなしの状況です。

増税せずにサービスを維持するには

カギとなるのは法人市民税の確保です。

例えば港区や千代田区では、法人区民税が歳入に占める割合は約20%ですが、横浜市は約5.8%と、政令指定都市の中でも平均かやや低い水準です。

個人市民税依存から脱却するには、企業の稼ぐ力を高め、法人市民税の割合を引き上げる必要があります。
具体的には、本社機能のさらなる誘致や、横浜を拠点としたスタートアップの創出が重要です。
そのためには市長のリーダーシップの下、経済政策を強化する市政運営への転換が不可欠です。

また、市街化調整区域の戦略的見直しによる住宅供給拡大で、固定資産税を確保することも検討すべきです。

固定資産税は、市税収入の中でも景気変動に左右されにくく、安定的に見込める重要な財源です。
特に新たな住宅や商業施設、オフィスビルなどが増えれば、土地や建物の評価額に応じて課税されるため、長期にわたり継続的な収入増が見込めます。

横浜市の場合、市街化調整区域は市域の約4割を占め、その多くが開発制限下にあります。
この区域の一部を戦略的に見直し、交通インフラや生活環境を整備した上で、持続可能な住宅地や産業用地に転換すれば、定住人口の確保と企業誘致の双方に効果を発揮します。結果として、固定資産税の増収のみならず、法人市民税や消費喚起による経済波及効果も期待できます。

もちろん、無秩序な開発は環境負荷や都市インフラの過剰負担を招くため、地域ごとの将来ビジョンや都市計画マスタープランとの整合性が不可欠です。市民との合意形成を丁寧に行いながら、資産価値を高め、安定財源としての固定資産税を着実に強化していく視点が必要です。

IR構想とこれから

2021年の市長選で経済政策の柱だったIR構想は、市民の反対により白紙となりました。
しかし将来の財源不足という課題は消えていません。「IRに代わる新たな財源を作っていく」と初当選時に約束した山中市長の責任とリーダーシップが求められます。

将来の財源不足は、先送りすればするほど解決が難しくなり、子どもたちの世代に重い負担を残します。
いまこの瞬間から、私たちは横浜の持続可能な未来を創るために動き出さなければなりません。

私は、市民の代表である横浜市会議員として、企業誘致・税源拡大・財政構造改革に全力で取り組みます。
そしてその過程を市民の皆さまと共有し、共に判断し、共に前進していきます。

横浜の未来は、私たち全員の選択で変えられます。ともに行動し、このまちを次の世代に誇れる姿で渡しましょう。

横浜市会議員:しらい亮次

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