議会人としての決意
1.事案の経緯 ― 内部告発から第三者調査へ
本件は、当時の人事部長による内部告発を端緒として明らかになりました。
組織の中枢を担ってきた人物が、自らの職を賭してまで声を上げたという事実の重みは、決して軽視できるものではありません。
庁内で何が起きていたのか、その真相を明らかにすることは、二元代表制の一翼を担う市議会にとって当然の責務です。
議会としてさらなる究明を進めるため、現在、弁護士3名による第三者調査が行われております。
中立性・専門性・独立性を担保するため、調査は完全にクローズドな形で進められており、その結果報告は7月30日に弁護士から議会に対して行われる予定です。
蓋を開けてみるまで、どのような事実認定と結論が示されるのかは分かりません。
しかし、市民の皆様に強くお伝えしたいのは、「大事なのは結果が出た後」であるということです。

2.なぜ市長の「進退」が問われるのか ― 権限と信頼の関係
横浜市長は、選挙で選ばれた政治家です。
そして、370万人を超える市民の皆様の税金の使い道を決める予算案を提出できる、唯一の人物でもあります。
人事権、組織編成権、そして予算編成権。
市長には他の誰も持ち得ない、絶大な権限が集中しています。
では、なぜ一人の人物にこれほどの権限が委ねられているのか。
答えは一つです。
選挙を通じて、市民の皆様から信頼を託されているからに他なりません。
裏を返せば、その信頼が損なわれた時には、進退について改めて厳しく問われなければならないということです。
信頼を失った者が絶大な権限を持ち続けることを許してしまえば、選挙という民主主義の根幹、ひいては地方自治の制度そのものが歪んでしまいます。
これは横浜という一都市の問題にとどまらず、日本の地方自治制度全体の信頼にかかわる問題だと、私は考えています。
3.議会の役割 ― 忖度なき追及こそ市民への責任
一方で、私たち横浜市会議員もまた、皆様からの信託を受けて、市民の代表としてこの場に立たせていただいております。
議会には、行政をチェックするという極めて重要な機能があります。
※ 組織運営に問題はなかったか
※ 職員が萎縮する環境が生まれていなかったか
これらを、皆様に代わって厳しく見極める立場に、私たち議員はあるのです。
そして最も大事なことは、決して忖度せずに追及することです。
率直に申し上げます。
議会の中には、市長と結託し、忖度に走っている議員も少なからず存在します。
会派の論理、次の選挙、目先の予算配分。さまざまな事情はあるでしょう。
しかし、それは市民から託された信任に背く行為です。
議員が市長の顔色を伺うようになった時、行政のチェック機能は死にます。
チェック機能を失った議会は、もはや議会ではありません。

4.議会として市長に取り得るアプローチ ― 制度上の「武器」
「議会が市長を追及する」と申し上げても、具体的にどのような手段があるのか、市民の皆様には見えにくい部分かと存じます。
地方自治法および会議規則上、議会には市長に対して行使し得る複数の制度的アプローチが用意されています。
ここで、その全体像を整理してご報告します。
① 本会議・委員会での質疑・追及
最も基本的かつ日常的な手段です。本会議での代表質問・一般質問、常任委員会や特別委員会での質疑を通じて、市長本人および幹部職員に対し、事実関係と説明責任を公開の場で問い質します。
議事録として残ることが、行政に対する強い牽制となります。
② 100条委員会(調査特別委員会)の設置(地方自治法第100条)
議会が有する最も強力な調査権限です。関係者に対して証人出頭・証言・記録提出を法的に義務付けることができ、正当な理由なく拒否した場合は罰則の対象となります。
③ 決議・意見書の可決
法的拘束力は持ちませんが、議会の総意として市長に対する政治的意思を明確に示すことができます。
「猛省を求める決議」「説明責任を果たすことを求める決議」など、段階に応じた圧力の形があります。
議会の意思表明は市民世論と直結するため、政治的影響力は決して小さくありません。
④ 問責決議
市長の政治責任を明確に問う決議です。法的拘束力はないものの、可決されれば市長は極めて重い政治的ダメージを負い、辞職に追い込まれる事例も過去に多数存在します。
⑤ 不信任決議(地方自治法第178条)
議会が市長に対して発動し得る最も重い制度的措置です。
※ 市長は10日以内に議会を解散するか、失職するかの二者択一を迫られる
※ 解散した場合でも、新議会で過半数の賛成があれば再度不信任が成立し、市長は失職
首長と議会の対立が決定的段階に至った際の最終手段です。
⑥ 予算・条例案の修正・否決
市長の権限の源泉である予算編成権に対して、議会は「議決権」で対抗できます。
市長提案の予算案・条例案を修正・否決することは、行政の暴走を制度的に食い止める重要な手段です。
「予算を人質にする」のではなく、市民の税金の使い道として妥当かという観点から厳格に審査します。
⑦ 監査請求・住民監査請求との連携
議会からの監査委員に対する監査要求、あるいは市民による住民監査請求・住民訴訟との連携も、事案の性質によっては極めて有効な手段です。
⑧ リコール(解職請求)への側面支援
これは制度上、議会ではなく有権者による直接請求の権限ですが、議会が事実を明らかにし、市民の判断材料を提供することで、この住民自治のプロセスを間接的に支えることになります。
5.私の姿勢 ― 独りよがりにならず、共に
まずは7月30日の調査報告を、予断を持たず、しかし覚悟を持って受け止めます。
今の段階で「必ずこう動く」と申し上げることはいたしません。
事実の中身が分からないうちに結論だけ先走ることは、かえって独りよがりになるからです。
大切にしたいのは、ただ一つ。
市民の皆様、そして志を同じくする議員仲間と、共に考え、共に動くこと。
結果を丁寧に受け止め、皆様の声を伺いながら、取るべき道を一緒に選んでまいります。
結びに
権力を持つ者に対して「おかしいことはおかしい」と言うことは、時に軋轢を生みます。
それでも、市民の皆様から信託を受けた以上、私はその役割から逃げません。
同時に、この闘いは私一人で完結するものではありません。
市民の皆様の声、志を同じくする議員仲間の連帯、現場で働く職員の皆さんの勇気。
それらが束ねられて初めて、健全な市政は取り戻せます。
一緒に横浜の民主主義を守っていただきたい、心からそう願っております。
7月30日以降、事態は新たな局面を迎えます。
その一つひとつを、また市民の皆様にご報告し、ご意見を伺いながら、共に前に進んでまいります。
※本報告は現時点(2026年7月)での状況に基づくものです。第三者調査の結果内容および議会での対応につきましては、報告受領後、改めて詳細をご報告いたします。

横浜市会議員:しらい亮次